Discovery Institute News

ID理論:新しい方向への触媒

Chris Macosko
The Minnesota Daily
November 1, 2005

 インテリジェント・デザインは進化研究の向かう、新しい方向への触媒の役目を果 すものである。それは創造性をかきたてる、従来と違ったものの見方である。

  James Curtsinger 教授は、10月11日の「インテリジェント・デザイン:科学はちょっぴり、がまの油はたっぷり」(Intelligent Design: Short on science, long on snake oil)と題するコラム記事で、Lehigh大学の生化学者Michael Beheの「還元不能の複雑性」という概念を咎めている。カーツィンガー教授によれば、情報量 の多い細胞内構造物を、情報量のより少ない構成部品から、導き手のない進化によって説明することはできないとするビーヒーのこの概念は、「進化にとって無関係」だという。

  この主張を支持するものとして、カーツィンガーは二つの理由をあげている。一つは、ビーヒーや他のID理論家たちが「過去9年の間、重要な科学的洞察を生み出したことがない」ということである。二つ目は、ビーヒーの「還元不能の複雑性」の主たる例証であるバクテリアの鞭毛という、微小な外部モーター装置は、実は、タイプ3分泌システム(TTSS)と呼ばれる、より小さな、機能を果 す装置に還元可能だからだという。TTSSとは、厄介な悪者バクテリアYersinia pestisや、Shigellaと呼ばれる病原菌のもっている分子致死注射器のことである。

  このTTSS注射器についてもう少し詳しく知れば、違った結論に至るはずである。

  1995年1月、第3回BLAST (Bacterial Locomotion and Signal Transduction) 会議において、アイダホ大学の微生物学者でありID理論家のScott Minnichは、画期的な考えを発表した。「TTSSの致死注射装置は、逆進化(inverse evolution、一つの情報豊かなシステムが別の情報量の少ないシステムに変形すること)の一例であるか?」という論文である。

  ミニッチの考えは、数人の会議参加者によって取り上げられた。例えばRasika Harshey とAdam Toguchiは、1996年のTrends in Microbiologyの論評にこう書いている。「Shigella やYersinia pestisのような、動けない(鞭毛をもたない)病原菌も、鞭毛の遺伝子をもっているらしい。こういったものは、以前には移動可能だった種の痕跡と考えてよいのだろうか? 病原菌が鞭毛装置を利用して、狙った宿主の細胞に直接タンパク質を移すのに使うということがあるのだろうか?」――この画期的な考えは、ミニッチの過去10年にわたる出版物によって肉付けされて、最終的に正しいことがわかったのである。
そこで、この例はカーツィンガーの二つの主張にどう影響するか?

  まずこの事実は、ID理論家たちが過去9年間、鞭毛を振り回して遊んでいたわけでないことを示す。むしろ彼らは、彼らの見方に基づいて科学的な仮説を提起し、それが真理であると判明したのである。

  次にそれは、TTSSの致死注射装置が、より複雑な鞭毛のモーター装置よりも小さいのに、鞭毛に先行して存在したものでないことを示す。どう見ても鞭毛が退化して、あるいは逆進化してTTSSになったのである。邪悪なものが移動能力より先にくるとは誰も考えない。よってTTSSは、鞭毛の起源を説明するのに何ら関与するものでない。それは複合的機械が存在することを示すものであるが、モジュール機能はデザインの明らかなしるしである。サン・ディエゴ・カリフォルニア大学の生物学者Milton Saierが、2004年のTrends in Microbiologyの論評で述べたように、「進化は複雑さの方に向かうものであるが、鞭毛システムは最初に現れた」のである。従って、鞭毛の起源を説明しようとしてTTSSを持ち出そうとするなら、まさに説明を必要とするものの存在を前提としなければならない。

  是非ともはっきりさせておきたい。ID理論家たちは、一つの構造物が別 の構造物に変わることができないと言っているのではない。また、ひとたび鞭毛が存在したなら、それは導き手のない進化によって、TTSSのようなより単純なものに変わることがありえないとも言っていない。彼らが言っているのは、情報量 ゆたかな鞭毛の存在は、相応の十分な説明を要求する何ものかだということである。更に大切なことは、情報の起源を考慮に入れないどんな説明も十分ではない、そして導き手をもたぬ 進化はこの部類に入る、と彼らが言っていることである。

  カーツィンガーは、TTSSと鞭毛の関係の背後にある事情を、十分に知らなかったのかもしれない。しかしそれでも、IDがハーヴァードやバークレーのような大学に与えた影響について取材記者たちが報告していることを一瞥していれば、これが決して「無関係」などではないということを彼に分からせたであろう。例えば、つい先週の日曜日、「ボストン・グローブ」のジャーナリストPeter Dizikesは、「浮かび上がるインテリジェント・デザインの大きな存在が、進化学者たちに、はっきりと見分けられる影響を与え始めた」と書き、ハーヴァードのシステム生物学者Marc Kirschnerの「我々はID理論家の提出する問題を突き放すことはできない、たとえその一部によくない意図があったとしても――」という言葉を引用している。

  少なくともこれだけは認めなくてはならない。IDは進化にとって関係があるということ、そしてそれは新しい方向への触媒であるということ。その例として、カーシュナーとバークレーの生物学者John Gernhartの共同の新著The Plausibility of Life(生命のもっともらしさ)がある。インテリジェント・デザインは、まさにそれが提起する問題に科学者たちのある者は関心を払ってきたがために、進化の研究に方向転換をもたらしつつあるのである。
(クリス・マコスモは化学技術と素材科学の教授、コメントはletters@mndaily.comへどうぞ)

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