Discovery Institute News

ドーヴァー裁判で証言したフラー教授の悩み

Zoe Corbyn
The Guardian
January 31, 2006

1981年アーカンザス州リトルロックの法廷で、マイケル・ルース(Michael Ruse)が、「創造科学」は生命起源の信仰に基づく説明だから全く科学ではないと証言した。「私の考えでは創造科学は宗教です」とルースは述べた。アメリカの難題の進化論争で、科学哲学者が証言台に立ったのは初めてで、彼の言葉は当時22歳の博士課程学生だったSteve Fullerに強い印象を残した。「それまでは、科学の性格について証言を許されていたのはプロの科学者だけだったから、それは一つの先例になるものだった」とフラーは当時を振り返る。

現在フラーはウォーウィック大学の社会学教授になっている。昨年10月ペンシルヴェニア州ドーヴァーで、彼もまた法廷証言をすることになった。しかしダーウィン進化論の擁護者であるルースと違い、フラーはインテリジェント・デザイン支持の学識ある証人として立ったのである。フラーはID――自然界のあるシステムはあまりにも複雑なので、それらは知的主体によってデザインされたに違いないとする考え――が理科のカリキュラムに加えられるべきだと主張した。そして敗北した。ドーヴァーの判定は、IDはクリエーショニズムから出たものであるから科学として教えてはならないというものだった。「ドーヴァー裁判の判事は、専門の科学者の意見を基準とする昔へ戻ったのだ」とフラーは語る。

フラーは個人的にはID党ではない。しかしIDは「互角の立場」になければならないものだと主張する。進化論について彼は、ダーウィニズム側がほとんど証拠を握っていて、陪審員が欠席している状態だと言う。彼は、自分は教会にも行かずどんな宗派にも属さないが、「キリスト教的な思想には強い共感をもつ」と言う。「キリスト教と世俗主義の間にはっきりした境界線を引くべき一点があるとは思えない」と彼は言う。

無理強いされると、彼は自分のことを「世俗的人本主義者」だと言うが、それは一つには反応を誘い出すためだと断る。「いみじくも、自分を世俗的人本主義者と呼ぶ人々は自分をダーウィニストと考えている」と彼は言う。彼の考える世俗的人本主義とは「人間を現実世界の中心に置き、神を自分の姿に似せて作り、進化を操作する思想」のことだと言う。

彼は、宗教信仰を攻撃する二本のテレビ・フィルムを最近作った、オックスフォードの「科学の一般 理解」教授であるリチャード・ドーキンズを批判してこう言った――「おそらくドーキンズは世俗的人本主義の歴史についてよく知らないために、ダーウィンが神を殺したと同時に人間をも殺してしまったことを理解していないのです。」そのフラーは先週木曜日に、「科学をめぐる戦争」というBBC2のドキュメンタリー番組に出演した。

フラーの研究分野は社会認識論であるが、彼によれば、科学として通 用するかしないかは、科学の体制を牛耳っている進化論者側と、多くの宗教的声援を受けた周辺的なID側の力の闘争の如何にかかっている。「私は少数者支持の立場に自分を置いている。そしてそうしなければ組織的に排斥されてしまうであろう観点を主張しているのです」と彼は言う。

「あなたがもし科学(史、理論)研究の授業に出ていれば、私が言ったことはごく当たり前のことだと分かります。問題は、それが法廷で言われ、しかも科学の方針にかかわることになると、人は激昂するのです。」彼は科学研究を専門にやっている人たちが、もっと真剣に自分の役割を考える必要があると考えている。「私たちはこれまで、我々の知見が現実に影響力をもつような場面 で、それを述べる勇気をもたなかったのです。」

フラーによれば、ID理論の実践者がこの論争に取り組むやり方は、彼らが現実に一つの科学的な事業を企てていることを意味するものである。しかし彼はクリエーショニズムについては一線を引く。なぜならそれは科学的方法を放棄するもので、「そういった人たちは基本的にバイブルを科学として教えている」からである。

フラーにとって宗教と科学は両立するものである。彼は進化論がドグマ(教義)として教えられていると抗議する。それは「比較すべき相手」をもたない。そしてIDがまさにその機能を果 すものだと言う。

歴史的に見て、科学の原動力となったのは宗教である。「もし一神教がなければ、今日我々が知るような科学はなかったでしょう」と彼は、ニュートンやメンデル、そして神の計画に対する彼らの信仰を引き合いに出しながら論ずる。「ドーキンズは宗教はすべての悪の根源だと言います。かりにそうであったとしても、それはまたすべての科学の根源なのです。」

彼の見るところでは、宗教は、たとえ人々が神を信じなくても、今日彼らが受け入れている科学的飛躍をもたらした強力な影響力であった。フラーは、IDが同じような効力を持ちうるものであり、だからこそもっと多くの人がこれに磨きをかけるべきだと考えている。

IDを採り入れることによって科学教育は進歩するだろうと彼は言うが、これは先週のBBCの調査によれば、回答者の10人に4人が考えていることである。「科学教育の歴史的に感覚のすぐれた教科書を作り出す何らかの動機が必要だが、IDこそその役割を大きく果 すものです」とフラーは語った。「高校レベルで科学を取る学生の大半は、将来科学者になろうとする者たちではありません。大切な点は、教養ある市民としての教育、すなわち科学のよさが分かり、科学を見て科学だと判断でき、科学について批判的に考えることのできる人間を作る教育です。」

(彼の書いた10冊の本のうち)直接IDを扱ったThe Philosophy of Science and Technology Studies(『科学哲学と技術研究』)が最近出版された。また来月刊行予定のThe New Sociological Imagination(『新社会学的想像力』)は、進化論的心理学や社会生物学のような分野によって独占されようとする社会科学を救うことをテーマとしている。「問題の一つはダーウィニズムの影響力です。人々は人間を動物として考えることに全く慣れてしまっています。その結果 として、社会科学の焦点である、人間をより人間らしくする条件という側面 が危機にさらされているのです」と彼は言う。

フラーは、彼がドーヴァー裁判で証言をすることをウォーウィック大学に報告しなかった。それはすぐに知られてしまった。「大学に電話をかけ、私をクビにせよ、またそんな大学には子供を入れないぞ、という人たちが大勢いました。」大学の反応は、これをもっと大きな公的討論のためのきっかけとして利用しようというものであった。「これについて大学ではおびただしい討論がなされてきました」とフラーは語った。

彼が証言した直後から、インターネットはこの証言を分析するブログの記事であふれかえった。彼は批判に答えるのに週5時間から10時間も費やした。「どうやらこういうことをすると、人には好かれないようです」と彼は言う。マイケル・ビーヒーはID理論の構築者の一人であり、ドーヴァー裁判ではスターとして証言したが、ペンシルヴェニアのリーハイ大学の生物科学部から公的に追われることになった。

「このように同僚やその他あらゆる人々から弾劾されるのは、常に覚悟しておかなければならないことのようです」とフラーは語る。「私は正規の大学のポストについていない人たちに、こういった行動を勧める気にはなれません。」

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