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映画『追放』――カリフォルニアからの報告

By: Lori Arnold
Christian Examiner
March 31, 2008

カリフォルニア州サンディエゴ発―― 好奇心の強い人は知りたいだろうが、もしアメリカの大学生がダーウィンの進化論を超える選択肢を求めているとしたら、当てがはずれるであろう。

それが映画『追放―インテリジェンスは許さない』の前提である。このドキュメンタリーは、「インテリジェント・デザイン」と呼ばれる生命についての代替説を学ぶことに興味を示す教授や学生に対する、大学内部での数々の検閲の例を陳列してみせる。

インテリジェント・デザイン論は、生命がランダムな、無目的の、偶然の発生としてつくられたものではなく、すべての生命は知的デザイナーから出た明らかなデザインを有していると主張する。作家、エコノミスト、俳優、大統領のスピーチライター、そしてコメディアンでもあるベン・スタインが中心役を果 すこのドキュメンタリー(4月18日、全国の劇場公開予定)は、アメリカ全土の検閲の実態を個別 に調査して廻る。

「神に触れることができない小さな箱の中に、科学を閉じ込めておきたい人々がいるのです」と、スタインは映画の中で語る。

このドキュメンタリーに登場する一人に、ジョージ・メーソン大学の専任客員教員キャロライン・クロッカー博士がいる。細胞生物学者のクロッカーは、3年前、細胞の構造、機能、その進化について講義をしていたとき、ID理論に関する数枚のスライドなどを使いながら、これを一つの代替理論として示した。すると彼女は監督者から叱責され、講義担当から外され、学期の残りを実習の教育へ左遷されたのだとクロッカーは語る。そして彼女の契約は、次の学期には更新されなかったのである。

「教育における私の目標はいつでも、自分たちが教えられていることについて学生に考えさせることであり、学んだものを吐き出させることではありません」と、彼女はインタビューの中で語っている。「学生はダーウィニズムを疑うことを許されていません。大学の中には、学生たちが何を信じているのかを調査して、彼らを差別 する大学もあります」。

クロッカーは今、自分の経験に関する本を執筆中だと言うが、毎週、ID理論について研究することによって被る影響を報告してくる、少なくとも一人の学生と連絡をとっているのだと語る。一人の学生は医学部への入学を断られ、もう一人は博士号授与を拒否されたという。

「これは科学研究であって、犯罪ではないのですよ」と彼女は語っている。

IDEAセンター

ID科学を探究しようとする学生を助けようとして、クロッカーは最近、サンディエゴに拠点を置く「IDEAセンター」の主任のポストを引き受けた。

2001 年に創立されたこのセンターの名前は、知的デザイン(Intelligent Design)と進化意識(Evolution Awareness)の頭文字をとったものである。共同創設者のケーシー・ラスキンによれば、この非営利組織は、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)で1999年に設立された IDEAクラブから生まれたものである。

「私たちは、ダーウィニズムに疑義をもつ勇気のある学生たちを守るための方策に取り組んでいます」とクロッカーは語る。「私たちの主要な2つの目的は、学生を教育することと彼らを保護することです。彼らはそれを必要としているのです。」

ラスキンは、UCSDの一学生としてこの問題に関する本を読み、また学内の討論会に参加することによってID理論に興味を持つようになったのだ、と語る。それ以外には、 この理論は授業で論じられることはなかった、と彼は言った。

「目的は、学生たちがIDをめぐる論争やその研究について学ぶのを助けることです」と彼は語っている。「彼らはこれらのことについて学びたいのに、教員がそれについて話したがらないので、学ぶことができないのです。彼らはほとんどの場合、問題の一面 だけを教えられています。話題にされたこともありましたが、それは否定的な観点からでした。」

IDEAセンターの主な狙いは、大学や高校のキャンパスで学生たちがIDのクラブを始めることを援助することだという。UCSDのクラブでは、IDに関するピザと映画の会を夜に行い、IDを学ぶ他の課外活動のホスト役もつとめている。

「目標は、実際のところ、議論の最中に怒り出したりせず、友人としての関係を壊さずに真剣に知的な探究を行うことです」とラスキンは語る。彼は、アメリカの主要なIDシンクタンクの一つで、シアトルに拠点を置く「ディスカバリー研究所」のプログラム役員でもある。

現在、支部も含めて、全部で35のIDEAクラブが発足していると、IDEAのウェブサイトは述べている。 UCSDの他にも、クラブのある大学はカリフォルニアにいくつかあり、カリフォルニア州立大学、サクラメント大学、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校が含まれている。

宗教的な意味合い

IDの批判者は、この概念は創造論にきわめて近いもので、科学としては扱えないものだと主張している。
ラスキンは、IDがもっぱら宗教に基づくものであるという主張は間違いだと言う。「宗教的な人であろうとなかろうと、(IDEAクラブの)誰もが、IDは科学に基づく科学的主張であることに合意するでしょう」と彼は言う。

IDの支持者は、ダーウィンの思想が現れて以来150年間の、目覚ましい科学的発展を考慮すれば、もはやダーウィン説を支持することはできないと言う。DNA、細胞、微生物学、ヒトゲノムなどすべてが、ランダムな選択という考え方を非現実的なものにする複雑さを示していると彼らは言う。デザインは生命起源の唯一の合理的科学的な説明であると。

科学的研究とそのプロセスの問題のほかに、スタインはこの映画を使って、ダーウィン説をめぐる論争には、なぜ特別 に重要なものがかかっているのか、いかにこの理論が旧約聖書の天地創造の記録を転覆させるだけでなく、現代のキリスト教の弱体化を目論むものであるかを示している。

映画の封切り前に提供された一部紹介の中で、スタインは、著名な無神論者で進化論支持者であるリチャード・ドーキンス、P・Z・マイヤーズ、ピーター・アトキンスにインタビューをしている。これら無神論の代弁者すべてが霊的な領域を攻撃する。

ミネソタ大学モリス校の生物学教授のマイヤーズは、宗教は趣味のようなものだと言い、ちょうど編み物のように、宗教によって心を慰められる人たちがいるのだと語る。

「我々がしなければならないことは、宗教が本来とり扱われるべきレベルでとり扱われるようにすることです」と、彼はスクリーン上のインタビューでスタインに話している。「それが幾分おかしいのは、人々がいつもそのために週末に集まりながら、これまでそれほど彼らの人生に影響を及ぼしてはいないことですよ。」

宗教の価値を下げることは社会のためになるだろう、とマイヤーズは言う。すなわち「より進んだ科学リテラシーは宗教を浸食するものであり、ますます科学は宗教にとって代わることになります。そのことがますます宗教を追いやり、ますます科学の進出を可能にしています。そして最後には宗教は、メイン料理というよりは付け合せであるべき本来の宗教の場所に、それ相応の場所を占めることになるでしょう。」

「もし宗教から倫理的メッセージを切り離したら、何が残るでしょうか? たくさんの単なるおとぎ話ですよ。」

オックスフォード大学の化学教授ピーター・アトキンス博士は、『追放』の評価においてもっと単刀直入である。

「宗教というものは基本的にまったく空想の産物です」と彼は語る。「それは特にどんな説明すべき内容もない空虚なものであるだけでなく、害悪です。」

人間の知的好奇心

ラ・ミラーダにあるバイオラ大学の生物学教授であるポール・A・ネルソン博士は、このドキュメンタリーを賞讃しているが、それはただ彼がスタインによってインタビューされたID擁護派の1人であるからだけではない。

「クリスチャンと呼ばれる人々が現れるよりはるかに前から、人々はデザインという問題をめぐって論争していました」と、彼はシカゴの自宅から電話インタビューに応じて語っている。「それは人類そのものと同じくらい深い問いなのです」。

ディスカバリー研究所の「科学・文化センター」の研究員であるネルソンは、学問の自由の問題はしばしば米国憲法修正第1条(政教分離)の問題と衝突すると思うと語る。というのも代替科学理論には明らかに不利だからである。

「それでこのおかしな偏向した競技場がつくられているのです」と彼は言う。「そのため特にアメリカの高校にこの怪しい不均衡があり、それは全く不自然です。すべての理論は平等であるのに、ある問題では他の場合ほど平等ではないのです」。

その結果は問題を短絡化し、究極的にはダーウィン狂にとって逆効果 となるだろう、と彼は考えている。
「彼らは何か恐ろしく間違った事態になっていることを認識する必要があります」と彼は言う。「科学の常に開かれた問いがゆがめられているのですから。」

高等教育においてのIDを妨害する企てにもかかわらず、ネルソンは、学生たちが「少しの接種を受ける」ことで、十分に進化について疑問を持つようになると語る。

「教育機関は、自分たちが進化のことに関しては正しいのだと、大部分のアメリカ人を納得させるのに失敗したのです」とネルソンは言う。

ネルソンは、このドキュメンタリーによって一般 大衆の前での討論が継続され、それが自然に学校のキャンパスに反映するだろうと期待していると語る。

「結局のところ、私は希望をもっています」と彼は言う。「人間の知的好奇心はとても強いものなので、最後には勝つでしょう。知的な自由が勝利を収めるでしょう。『追放』のメッセージは、ベルリンの壁が崩れたということです。」

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