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兄弟間不和:新無神論者vs.工作無神論者

Michael Egnor
August 27, 2009

このところダーウィン世界は、いがみ合う2つの陣営に分かれている。無神論者の派閥間で昔からよくあるように、事態はかなり険悪となっている。

一方には新無神論者と言われる、コイン(Coyne)、ハリス(Harris)、ドーキンズ(Dawkins)、デネット(Dennett)、マイヤーズ(Myers)がいる。

もう一方には、よい言葉が見当たらないが、工作(framing)無神論者というべき、ルース(Ruse)、ムーニー(Mooney)、カーシェンバウム(Kirshenbaum)、ニスベット(Nisbet)、スコット(Scott)らがいる。

ケン・ミラー(Ken Miller) のようなわずかの有神論的ダーウィニスト(これは形容矛盾)を除いて、これら争う人たちの動機は同じで、人間と自然の無神論的・ダーウィン的理解をどうしたら最もうまく推し進められるか、ということのようである。これらの派閥はその戦略が違うだけである。

新無神論者たちは戦闘的であることをよしとする。彼らの信条は――
1)科学の方法はすべての知識を得る正しい道具である。(これは自己矛盾。なぜならこの実証主義的な主張自体が一つの哲学的推論であって、科学的推論ではない。)
2)正しく理解された科学は無神論が真理であることを証明する。(もちろんこれはナンセンス。自然界に形相因・目的因が働いている――自然界のガヴァナンス――という当然かつ避けられない推論は、自然界を超越する一つの心が先立ってあることを暗示する。)
3)宗教は人類の苦しみの種である。(現実には、人間は常にあらゆる所で悪をなす傾向があった。人類の知っている最も過激な悪は権力を握った無神論であった――恐怖政治、スターリン、毛沢東、ポル・ポト、金日成、等々。)
4)宗教的信条に基づく指導的地位の拒否(例、フランスシス・コリンズ)や、懐疑派の追放(例、映画『追放』)のような全体主義的方法は、無神論、特に科学のそれを推進するのに必要である。

工作無神論者たちは戦略的狡知をよしとする。彼らの信条は――
1)科学的方法を、問いの科学的でない領域に適用することはできない。
2)無神論とダーウィニズムは哲学的諸理由で真理である。しかし科学は形而上学(哲学)への明らかな言及なしに行われるのが最上である。
3)宗教の人類への影響は多様である。そして善いもの(キリスト教倫理)を保存し、悪いもの(創造論、クリエーショニズム)を排除することが絶対必要である。
4)実践的無神論の本質である全体主義的方法は、(おそらく)道徳理由だけでなく戦略的理由で避けるべきである。

「新無神論」者と「工作無神論」者の闘争がどのような結果 になるかは面白い見ものである。私は、新無神論のアプローチがID運動をかなり後押しするのは間違いないと思う。新無神論というのは、無神論のもつ嫌悪すべき特徴のすべてを集約したようなものである――自己破壊的な傲慢、哲学や神学や歴史の基本をすら知らないこと、容赦なく検閲という手段に訴えること、人の職業の破壊、その他の全体主義的方法。新無神論者たちが論争において有神論者をやりにくくさせる唯一の点は、新無神論者たちがあまりにも過激にはっきりものを言うので、彼らを風刺することもできないことである。

工作無神論者の方はもっと扱いにくい。彼らは活動する科学者でない場合が多い。しかし彼らのイデオロギーをより効果 的に推し進めるわざに長けている。無神論を推し進めることのできる唯一の道は、それが文化の変化に暗黙に付随する場合であって、明らかにされる場合ではない。それが、ダーウィニズムが文句なしに無神論の最も強力な駆動力となった理由である。神は存在せず、したがって自然界に目的などないという主張は、考え深い人々にとっては見え透いたナンセンスである。それは唯一、「科学」という衣をまとってのみ推し進めることができる。「進化」という曖昧な定義の言葉が非常に役に立つ。そしてこれまでかなりの効果 を奏してきたのである。

工作無神論者たちはこのことをよく理解している。哲学者のマイケル・ルースは人好きのする人物だ。しかし彼のID対ダーウィニズム論争についての混乱した考え方は、彼の論争相手である野性的な新無神論者のそれに劣らず、不正確で辻褄さえ合っていない。しかしルースは、ダーウィニズムもそれが全体主義宗教として売りに出された場合には効力を失うこと、そして我々の文化においてダーウィン的無神論と唯物論を推進する唯一の方法は、この理論の(全く明らかな)性格とそれが含む意味について、あまりはっきりさせないことだということを悟るだけの賢明さをもっている。クリス・ムーニー、シェリル・カーシェンバウム、マット・ニスベット、ユージェニー・スコットらも同じで、無神論的世界観を推進するのに必要なマーケット戦術をよく理解している。彼らの新無神論者批判は、原理とはほとんど関係がないように見える。だからもし新無神論がその計画を推し進めるのに明らかに成功するなら、工作派は無神論の拡大するイデオロギー的制覇を静かに喜び、その醜い戦略にあえて異を唱えはしないだろうと思える。しかし工作派には氷山が近づいているのが見えている。そして彼らは、もし無神論がはっきりと明言され、その本質である全体主義的方法を使ってそれが推し進められるなら、計画は失敗することを知っている。

新無神論者たちの正直さのために、工作無神論者たちは火消しに奔走しなければならなくなった。しかし工作派無神論者たちが自分自身に問うてみなければならないことは、無神論は救済するに値するか、ということである。存在の根底をなすのはおそらく一つの「心」であって、モノではない。自然界の目的という観念はおそらく真理である。

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