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科学絶対主義と全体主義

Michael Egnor
November 30, 2009

(注:ここ数日、人為的地球温暖化についての大規模なデータ改ざん・偽装工作事件が発覚し、「地球温暖化詐欺」「Climategate事件」(Watergateに引っかけて)などと呼ばれて報道が盛んに行われている。そのニュース報道の1つに、脳科学者マイケル・エグナーが前文をつけて紹介したものをここに訳出した。これをダーウィニストの慣習的行動に重ね合わせてみると、パターンが全く同じだということがよくわかる。)

科学絶対主義(scientism)には全体主義的サブテキストが付き物だ。科学絶対主義は、真理の独断的な確かさと、全体主義的政治運動にきわめて近い反対者への完全な不寛容を要求する。科学絶対主義は前にも増して政治的左派から生まれているが、政治的左派は前世紀における全体主義の主たる発生源であった。

ダーウィニストや地球温暖化科学者たちが、最も穏やかな懐疑に対してさえ取る反動行為は、際立って悪意に満ちたものである。彼らは利用可能な事実上あらゆる手段を用いて、疑う者たちを追跡し、反対意見を圧殺する。もしある学区が教科書に、「ダーウィン進化論は説であって事実ではないから、それに対する証明と反証の両方を考慮すべきである」という注意書きを貼ったりすると、連邦裁判所に訴えられ、財政破綻することになり、これに応じない者には留置所行きの可能性があることになる。数十年前まで、いったい誰が、科学者が科学的論争を解決するのに、裁判所を用いるなどということを想像しただろうか。

(発覚した)「クライメートゲート」のeメールが十分に証明するように、地球温暖化を信ずる科学者たちは、疑念を表明する科学者たちを組織的に排除し、専門家としての機能を奪っている。これらのeメールは、気象学に学理的純粋さが切実に要求されることを示している。これら地球温暖化科学者たちは強引な戦術を用いて「コンセンサス」を作り上げ、これを異常な目的をもって行使している。そして、なぜ科学者がそのような野蛮な戦術を使うのかと訊ねられると、彼らは「これはコンセンサスの科学だからだ」と答えている。

特に私に驚きだったのは、科学の正統派に単に疑いをもつことに対して「否定主義」(denialism)という名称が用いられていたことである。これは正統派を疑う者を、社会的に認められないようにしようとする努力を示すものだ。ブルジョアジー、反動分子、修正主義者、否定主義者――まさにこれはレーニンの辞書によく合っている。

英スペクテーター誌のMelanie Phillipsは、この地球温暖化運動の全体主義的潮流についてすばらしい論説を発表している。これは我々の文明の科学絶対主義への、他の侵犯行為に対してもよく当てはまるものである。

未熟な全体主義

Lawson卿がきょうのタイムズ紙で、地球温暖化スキャンダルの調査を要求しているのは正しい。以下に述べるように、一連の漏えいしたeメールによって、人為的地球温暖化説の最も影響力ある科学的主唱者たちが、彼らの説を宣伝するために科学的証拠を操作し、隠蔽し、改ざんしていたことが明らかになった。彼らは反論して、(インターネットを通 じて知れ渡った)eメールの内容は前後関係なしに抜き取られたものだと言っている。確かにこれだけの大量 の発覚した材料の中には、罪のないものが含まれている可能性はある。しかしこれだけ大量 であれば、そのような罪のないものを中から見つけることは困難だ。ローソンが述べているように――

完全に罪のないことを説明できる部分もあるのかもしれない。しかし明らかなことは、英国政府のみならず、他の国々がIntergovernmental Panel on Climate Change(IPCC、気象変化に関する国際政府調査団)を通 じて、長期的で超高額の予算を伴う政策決定の根拠にしていると言っている科学的証拠の、真否が疑問に付されることになったことである。しかも英国の科学の評判がひどく傷つけられたことだ。ハイレベルの独立した調査が早急に行われるべきである。

これらのeメールから明らかになったのは以下のような事柄である――

IPCCの科学者Keith Briffaはこう認めている:

私はこの科学の要求するものとIPCCのそれを天秤にかけて難儀しましたが、この2つは必ずしも同じではないのです。

次は、イースト・アングリア大学ハドレー・センター(Hadley Center)の気象研究ユニット(Climate Research Unit,CRU)主任Phil Jonesと、人為的地球温暖化(Athropogenic Global Warming, AGW)を裏付けるあの悪名高い(虚偽の)「ホッケースティック・カーブ」を作り出したMichael Mannが、AGWを疑う者たちの仕事をどうやって抑えつけるか――そのためのピア・レビュー規則の改変も含めて――を論じている内容である。

あるeメールでは、センター主任のフィル・ジョーンズが、ペンシルヴェニア州立大学のマイケル・E・マンに宛てて、人間の活動と地球温暖化のつながりを疑問視する大学人の仕事が、気象科学についての世界的コンセンサスを代表する権威あるIPCC報告に、載せるに値するかどうかを問題にしている。

「これらの論文がどちらも次号のIPCC報告に予定されているのは解せない」とジョーンズは書いている、「ケヴンと私で何とかこれらを締め出すことにする――たとえ査読された文献とは何かの定義を変えなければならないとしても。」

もう一つのメールでは、ジョーンズとマンが、どうやったらある学術雑誌に圧力をかけて、彼らに反対する懐疑的学者の論文を受理させないようにできるかを相談している。「たぶん我々は、気象研究者仲間の我々の同僚に勧告して、もうこの雑誌には投稿もできず、この雑誌の論文を引用もできないようにすべきかもしれない」とマンは書いている。ジョーンズはこれに応えて、「私はこの雑誌にメールして、彼らがこの面 倒を起こす編集者を辞めさせない限り、この雑誌とは関係を断つと言ってやるつもりだ」と言っている。

次の例は、フィル・ジョーンズが、「情報の自由」の要求のもとにそれを明らかにしなければならなくなる事態を避けて、データを削除しようと持ちかけている:

二人のMMがここ何年もCRU施設のデータをつけ狙っている。もし彼らが今英国には「情報の自由」条例があることを聞いたりしたら、私は誰にでもそれを送るよりは、ファイルを削除するつもりだ。

ところで次に引用するのは、IPCCの大物科学者Kevin Trenberthが懐疑派の主張を認めるという有効な例である。BBCの「気象変動リポーター」Richard Blackが1998年以降、温暖化はなく、太平洋の揺れが「次の20〜30年の冷却化を確実にするだろう」と発言したことの影響を心配するスレッド上の意見に対して、彼はこう述べている――

私は、地球温暖化なんていったいどこにあるのかという論文を自分で書いているよ。我々はここボールダーにいてこれを問うているのだが、ここでは過去2日の間に記録上の最も寒い日の記録を破ったのだ。4インチの積雪があった。過去2日間の最高温度は30F未満だったが、通 常は69Fで、これまでのこの時期の記録を10Fもの差で破ったのだ。最低気温は18Fでこれも記録破り、前の記録よりかなり下だ。これは一月の天候だ(ロッキーズの野球のプレイオフが土曜日に中止になり、昨夜氷点下の中でプレイが行われた)。実のところ、我々はこの時期にこれだけ温度が下がることを説明できないのだ。そしてそれができないというのは滑稽な話で・・・気候システムに何が起こっているのかを説明できないというのは、地球条件操作という考え方にまったく希望がないということを意味する。それが成功するかどうか決してわからないのだから。これは全く茶番劇だ!

このたび流出した資料は、こうした科学者が大衆を騙すために企んだ「ニクソン流の偏執症的たくらみ」と呼ばれているものを暴くことになった。私は実際はそれよりもっとたちの悪いことが明るみに出たと思う。

真相と考えられるのは、これらの科学者が初めから世間をミスリードしようとしたというよりは、彼らの人為的地球温暖化イデオロギーに合わないデータを、無理やりそのイデオロギーの証拠にしようとしたことである。私にとって、最もそのことを物語るメールの一つは、「中世温暖期間」(MWP)について述べたフィル・ジョーンズによる次のメールである――

最低限言えること――MWP(それがいつだったにせよ)が地球規模で過去20年と同じくらい温暖だったなどということはあり得ない。またLIA期のまるまる10年間が地球規模で1961〜90の平均より1度C以上寒冷だったということもあり得ない。こうしたことはすべてカン(gut feeling)であって科学ではない。長年、地球の基準や変動を扱ってきた体験だ。

言い換えると、たとえ科学(あるいは歴史)が、MWPが今日より温暖であったと教え、従って、我々は工業化から生ずる二酸化炭素によって引き起こされる過去に例のない温暖化時代に生きているというAGW神話の根拠が崩されようと、それは真実ではない、なぜならハドレーのCRU主任の「カン」がそう教えるからだ、ということである。

これらのeメールによって明らかになったデータ操作、歪曲、隠蔽がなされたのは、どうやらこれらの科学者たちが、自分の信念が正しいばかりでなく他から批判されるはずもないと思っていたからである。だからその間違いを示す証拠に直面 したとき、彼らはあらゆる手段を用いて、データが彼らの最初の計画に沿うように工作したのである。そしてその計画そのものを疑問視した人々は、門前払いされて記録から排除された。なぜならそれを疑問視すること自体が許されなかったからである。AGW狂信者だけが、科学とは何かを決めることができるようである。真理とは彼らのイデオロギー的計画に合うもののことである。それ以外は何であれ棄てなければならない。

次のどちらがより恐ろしく破壊的であろうか――人々が必死になってうまく他人を騙そうとすることか、それとも、彼らがあまりにも一つのイデオロギーの虜になり、客観的・理性的に考える力を失ってしまうことか?

私は人類の恐ろしい歴史がその質問に対する答えを与えてくれると思う。ニクソンは正直な人でなかった。しかしここで我々が扱っているのは全体主義的な人格である。一つのことが今や、人為的地球温暖化詐欺について誰の目にも明らかになった。それは科学ではないということである。

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