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ウィキペディアと反証不能神話

David Klinghoffer
January 6, 2010

どんな科学の教科書よりもはるかに影響力の大きいのはウィキペディアだが、びっくりハウスの鏡に映したようなインテリジェント・デザイン解釈は、その歪められた像とともに直接、一般 大衆の意識に入って生きることになる。もしあなたが何か暇つぶしの方法がないか探しているなら、ウィキペディアのIDに関するどんな項目でもよい、そのセンテンスごとの間違いを数えることにしたら、かなりの時間がつぶれるだろう。これはもちろん本当に暇つぶしのためであって、時間を効果 的に用いてなんとか誤りを正すためではない。この世でウィキペディアの項目を編集する人たちほど時間の有り余っている連中はいないだろう。彼らは、四六時中無報酬の仕事をやっているらしく、いつでも待機していて、修正されたと気付くや否や、直ちにその箇所を元の間違ったヴァーションに直す。

いろんな誤りがあるなかで、ウィキペディアの誤りで部類の多いのは、IDに対する迷信的、軽信的、曲解的、噂による信念であり、これはダーウィン的神話グループといってよいものである。中でも特に、反証不能性と検証(テスト)不能性についての神話がウィキペディアの基準では上位 を占める。この後者は、ダーウィニズムが疑問の余地のない「事実」だとする大前提的観念にとって、ある特定の神話がいかに重要かを示すもので、ウィキペディアの編集者たちがいかにこれを強調しているかをみれば、それがわかる。

IDが検証も反証もできず、したがってそれは科学でないという神話的想定に関して、ウィキペディアの編集者たちは米国科学アカデミーの文書を引用している。彼らはあのすぐれた科学者にして哲学者(?)ジョン・ジョーンズ裁判官を引用し、有名なブロッガーP・Z・マイヤーズを引用している。また彼らは哲学者Elliot Soberの「ID弁護者はいつでも逃げ道を用意している。これはIDが反証可能な科学理論でないことの証拠だ」という言葉を引用する。

しかしこれはおかしくないだろうか――つまり、ダーウィン信奉者たちはIDを、あたかも立派な科学であるかのように、事実的・科学的根拠によってこきおろすことに無上の喜びを感じながら、結局は直ちに反証不能神話というバリケードの背後に戻っていくのである。もし彼らが、神話か攻撃のどちらかに自信があるならば、おそらくその一方だけを選んでそれに専念するだろう。

ひとつ例を示そう。新年は、去る6月に行われた第一回国際原生生物学会シンポジウム(北米セクション)に基づく一連の論文発表で始まった。これらは一次研究ジャーナルThe Journal of Eukaryotic Microbiologyに出ている。その1・2月号には「水平遺伝子転移と系統進化論はインテリジェント・デザインの虚偽を明かす(Debunk)」という主題による論文が集められている。ロジャー・ウィリアムズ大学、ジョージア大学、ニューヨーク州保健局、オールバニー大学、マサチューセッツ大学の生物学者たちが、「IDの誤った論理を暴く(Uncover)」あるいは「IDという神話を排斥する(Dispel)」といったタイトルで寄稿している。

虚偽を明かす? 排斥する? 暴く? これらは大いに反証可能性を指しているように聞こえる。こうした作業がうまくいくかどうかは別 問題である。しかし少なくとも彼らが論文を書いているとき――それぞれかなり実証的に深く詳細な論文だ――著者たちは、IDがテスト可能であり、ID唱道者たちは反論をかわすことができないだろうという、当然の前提に立っていたはずである。そうでなかったら一体何のためにシンポジウムを行うのか? これに出席した生物学者たちは無限のヒマを、賽の河原で楽しむ人たちではなかろう。彼らはウィキペディア編集者のように、頼まれもせず強迫観念で仕事をする連中とは違うだろう。それとも私は大学人というものを誤解しているのか?

これは私に人気漫画「ピーナッツ」を思い出させる。ルーシーが「精神科治療1回5セント」と書いた看板とともに店を出している。彼女の坐っている窓の下にはもう1枚の手書きの札があり「医者は今」と書いてある。それともう1枚、裏表に「います」「いません」と書かれた札が置いてある。医者はときにはいることもあるが、ときにはいないのだ。インテリジェント・デザインも、ときにはテスト可能または反証可能だが、ときにはそうでないのだ。もしこれが、どの医者あるいはどのウィキペディア編集者が担当するかによって起こる問題なら、この混乱は進化論者間の正直な意見の違いのせいだといえるだろう。しかし事実はそうではないようだ。私は、彼らの間に一定の見解があって、それは一貫して正直にIDを科学と認めるのだが、しかしテストの結果 誤りであることが判明した、という話を聞いたことがない。ダーウィン論争において、どちらかの側がもし本当に「常に逃げ道を用意している」としたら、それはID側でなくダーウィニスト側である。

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