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Sean B. Carroll がカンブリア爆発について
古臭いダーウィン弁護論を持ち出す

Jonathan McLatchie
August 2, 2010

ニューヨーク・タイムズが先週、人気のある遺伝学者ショーン・B・キャロルの論文を載せた。キャロルはおそらくevo devo(evolutionary developmental biology進化発生生物学)という新しい科学の専門的かつ大衆的な仕事で、最もよく知られた学者だ。キャロル論文は、カンブリア紀の化石記録が進化論に対して突きつける挑戦を退けようとする試みである。キャロルはこう書いている――

カンブリア爆発によって突きつけられる困難とは、ダーウィンの時代(とその後の長い期間)には、カンブリア紀の地層の下の膨大なより古い地層に、化石が全く見つからなかったということである。これは彼の進化論にとって大変困った事実であった。なぜなら複雑な動物は化石記録において、より単純な形態に先行されるはずであったからだ。


『種の起源』でダーウィンは、「これらの広大な、しかし全く知られていない期間にわたって、世界は生物に満ち満ちていたであろう」と言い、しかし「これらの広大な原初の時代の記録が全く見つからないのはなぜかという疑問に対して、私は満足のいく答えを提供することができない」と認めた。

ダーウィンが『種の起源』を書いた時代にはそれが主たるジレンマであったが、今日カンブリア紀が進化論に突きつける問題は、先カンブリア紀の地層に化石が見つからないということではない。そうでなく問題は、カンブリア紀に見出される高度に多様な動物門(phyla)の先行種の化石が存在しないことである。いったい、この分野の専門家であるキャロルが、この難問について考えたのだろうかと人は思うだろう。しかしキャロルは架空のものを攻撃することで、この問題をはねつけようとする。彼はこう続ける――

非常に長い時間と、この地球の果 てのいくつかの場所――オーストラリアの奥地、ナミビア砂漠、ニューファウンドランドの海岸、極北ロシアなど――の探索を要したのであったが、いま我々はカンブリア紀直前の時代の化石記録を手にしている。これらの地層が示すのは、その時代の海が、ダーウィンにとって確実に朗報であるような原始的動物を含む、さまざまな生物にあふれる世界だったことである。


現在、このかつて厄介な化石記録上のギャップであったものが、地質学者や古生物学 者にとって興味津津の時代となっている。地質学者は、地質学的タイム・スケールでのこの時代に固有の区分を与えてさえいる。6億3500万年前から5億4200万年前にいたる「エディアカラ紀」は、ここ1世紀以上の間に名付けられた最初の新しい地質時代である。のみならず地質学者たちは、このエディアカラ紀の地球の、気候と化学上の劇的変化が、いかに動物の進化を可能ならしめたかについての、いくつかの魅力ある理論を展開している。

キャロルは続けて、先カンブリア紀の柔らかい体をもつ動物――1946年地質学者Reginald Spriggによって発見されたCnidariaのような――の化石の跡の発見について論じている――

これらの奇妙な生物への科学者の注目は、10年も後に、もっと多くの柔らかい体をもつ生物がEdiacaran Hillsやイングランドで発見され、それらの時代が現実にカンブリア紀に先行するものとして確立されるようになって、やっと復活した。同じ時代の生物の堆積物が、ニューファウンドランドのアヴァロン半島のミステークン岬、南部ナミビア、ロシアのホワイト海、その他5大陸の30以上の場所で発見されている。これら地球全域に見られる円盤型、葉状分裂型、管状、分枝状、紡錘型などの生命体は、エディアカラ紀において生物が複雑で多様だったことを示している。

キャロルはエディアカラ紀の動物相について、どう結論しているか?――

エディアカラ紀の化石記録は、このように動物の起源をカンブリア爆発よりかなり前 に押しやっている。しかしそれはまた、微生物がこの地球を支配した25億年以上も後に、なぜ、より大きくて複雑な形態がこの時代に出現したのかという疑問を提起する。

私としては、キャロルや彼の仲間の進化論者が、この種の議論が、カンブリア紀をダーウィン進化論への挑戦と捉えることへの、説得力ある反論になると考える理由がどうしてもわからない。それは「ダーウィンのジレンマ」を解決するどころか、先カンブリア紀の柔らかい体をもった生物、特に海綿の胚などの存在は、この謎をいっそう深め、問題を更に困難にするだけである。ダーウィニストは矛盾するものの両方を取ろうとする――「カンブリア紀の条件は柔らかい体をもつ生物の保存には適していなかったのだから、カンブリア紀動物群の直接の先行種を期待すべきではない。それはそうとして、我々はカンブリア爆発などというものは全くなかったと言ったはずだが、それはエディアカラ生物群には、Cnidariaや海綿の胚さえ含む、柔らかい体をもつ生物が発見されているからだ。」

いずれにせよ、ここ(リンク)に詳しく論じられているように、エディアカラ動物相は、カンブリア紀に多様な形で爆発的に出現したように見える現代の動物門の祖先だとは、一般 に考えられていない。したがってこれらの生物の存在は、ダーウィニストにとって何の慰めにもならないはずである。Peter WardがOn Methuselah’s Trail: Living Fossils and the Great Extinctionsで述べたように、「後の研究が、これら砂岩の中に保存された古代の亡きがらと今日の生き物のつながりに疑問を投げかけた。ドイツ、チュービンゲン大学の偉大な古生物学者A. Seilacherは、エディアカラ動物相は、現在生きているどんな動物とのいかなる近縁性をももたないとさえ言っている。この見方では、エディアカラ動物相は、カンブリア動物相が始まる以前に完全に絶滅しているのである。(p.36)」

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