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「科学教会」が我々の宗教を敗退させる?

David Klinghoffer
December 17, 2010

オンライン新聞Slateが、先日、政治的・世界観的な先入観念が、気候変動について論争する両陣営――右翼だけでなく(ほとんど左翼の)科学者を含めた戦闘的左翼――を動かす力になっているのか、と問いかける洞察に富んだエッセイを載せた。これは進化論争を追っている者には明らかなはずの初歩的な観察事実だが、「スレイト」のような発言機関にこれが出るのは、うれしい驚きである。

筆者のDr. Daniel Sarewitz は、錚々たる科学者がこれほど政治的に偏っているのであれば、それは一般 大衆の間で科学者が現在、享受している信頼を損ねることになろうと憂慮している――

ほとんどの科学者が党派的に一方の側に与しているということであれば、彼らの特別 の社会的地位は、国策的な熱意が高まっていくときのマイナス要因となることが十分に考えられる。もしその社会的信頼が失われるならば、民主主義社会にとってそれは、莫大な、おそらく回復不能の損失となるだろう。

しかし私は、信頼の喪失はすでに起こり始めているのではないか、そしてそれは健全な発展につながるものではないかと考える。

最近、American Enterprise Instituteの2人の学者が、いろいろな公表されたニュースソースから、記者や他の物書きたちが、「科学によれば〜しなければならない」「科学に従って〜すべきだ」「科学の命令するところでは」「科学の要求するのは」といった権威的な物言いを、ますます多用するようになったことを、一覧表で示している。こういった物の言い方に、「科学」が我々に、破局的な地球温暖化や、ダーウィン進化論や、ダイエット食餌法など健康法や、その他いろんなことを信ずるように命ずるやり方が、典型的に表れている。

科学は自信をもっているらしく、今では道徳から終末論に至る、かつては宗教に特有の領域とみなされたことについてまで、信ずることを要求している。かつては、地球の終末物語や生命起源、食べ物の組み合わせのタブーや不潔な習慣といったことを扱うのは、宗教であった。今では、たとえば、自由意志をもっているという我々の自覚は幻想にすぎないと科学が教えている。脳という肉のコンピューターを通 じて我々を操っているのは、我々の「利己的な遺伝子」である。あるいは科学は、正しいか間違いかの判断を、人間が「繁栄」しているか否かに基づいて下すことができる。

確かに、異常に自信のある俗世聖職者集団つまり科学者集団だけが、形而下的現実の単なる記述者としての伝統的役割から離れて、これほどの冒険を犯すのであろう。特別 に唯物論的な科学こそが「科学教会」の僧侶を装うという事実は、科学の地位 が我々の文化において、いかに安泰かを示している。

それともその逆が正しいのか? いろんな角度から眺めてみるとき、「科学教会」の独断的教義は、自暴自棄のあせりのように見え、ちょうど子供を抑えきれなくなった親が、ますます甲高い金切り声をあげているように聞こえる。ほかならぬ オバマ大統領という文化観察者が、最近、有権者たちは、彼自身と彼の行政の体現する「事実と科学」に敵意をもち正しく評価していない、と言って嘆いた。Wired誌のある論文は、気候変動についてますます疑いが広がっていくことに不安を感じ、大々的な(しかし哀れな)PRキャンペーンを始めよと主張している――

(引用文略)

実際は、「科学教会」は自信があるどころか、キリスト教が起こり広まっていく直前のローマの古来の宗教のような、脆さを大いに示している。紀元1世紀に、ローマの知識人のある者たちは、伝統的な古来の宗教を無慈悲にあげつらい嘲笑している。『ローマ帝国衰亡史』を書いたエドワード・ギボンは、この疑いの文化がいかに民衆の間に浸透し、彼らの古い神々への信仰が覆されていったかを語っている。

伝統的な信仰は尊敬すべきであった。しかしそれは、内側から朽ちていく梁によって支えられた家のようであった。最後には、ほとんどの人々が古い宗教をせいぜい生半可に信じていた。抵抗する僧侶たちでさえそうであった。1世紀の誰ひとりとして、古来の宗教のこれほど早い崩壊と、かつては日陰の存在だったキリスト教との入れ替わりを、予言はできなかっただろう。

我々の時代では、ダーウィン進化論論争が示すように、唯物論をめぐる疑いや懸念は、今かろうじて抑えられているだけである。「科学教会」からやってくる、ざわついた神経質な緊張感は、やがて訪れる唯物論教義の後退と、本来の科学の再興を予想させるものだ。支配的なパラダイムと世界観は永久不滅かとも思える。しかしそれらは入れ替わるのが習いである―― 一夜にして、とは言わないまでも、後で振り返れば驚くべき速さで。

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