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ダーウィン記念日のために:欺瞞とドーキンズの大ウソ

February 11, 2011
ENV

2月12日はダーウィン記念日である。そこで我々もこの日を記念して何かやっておきたい。チャールズ・ダーウィンの言ったことの多くは筋が通 っていて祝賀に値する。これは真面目に言っているので、例えば『人間の由来』(Descent of Man,1871)に次の有名な一節がある――

欺瞞は科学の進歩にとって大きな害悪である。なぜならそれは長く存在し続けるからである。しかし誤った見方は、たとえいくらかの証拠があったとしても、あまり害にはならない。なぜなら誰もが、それが誤りであることを証明することに健全な喜びを感ずるからである。そしてこれが達成されると、誤りへの道が一つ閉ざされ、しばしば真理への道が同時に開かれたことになる。(p. 385)

さてダーウィンが今生きていて欺瞞事実に出会ったら、どうするだろう? 欺瞞と誤った見方に立ち向かうというダーウィンの精神に則って、我々は今、誤った見方を推奨するために用いられている、ある特定の「欺瞞」を念頭においている。それらはともに、それとは無縁であるべき人物リチャード・ドーキンズによって広く宣伝されている。この欺瞞を「ドーキンズの大ウソ」と呼ぶことにしよう。 

この「大ウソ」は、ドーキンズが次の質問に答えているこの動画(リンク)で見ることができる――

進化論を支持するのに用いられるすべての証拠の中で、最も強力で最も反論できないこの理論の証拠を1つだけあげるとしたら、それはどんな事実ですか?

これに対するドーキンズの答えを文字化して次に掲げよう――

それにはあらゆる方面からの膨大な量 の証拠があり、これが特別重要だとして1つの種目を選ぶことは難しいです。化石があり、地理的分布の証拠があり、痕跡器官の証拠があります。まあ私にとって最も有無を言わさぬ (compelling)証拠は、現代の動物の比較による証拠、特に生化学的比較の証拠、遺伝子の分子的証拠でしょうね。


どんな動物でもセットにして、異なった動物のもつ同じ遺伝子を確認するのです。これは実際に可能です。なぜかというとDNAコードの文字――つまりすべての動物のもつ同じコード――同じ、例えば哺乳類すべてに、同じような遺伝子が本当に見つかるのです。例えばFOXP2と呼ばれる2000文字からなる遺伝子があって、その文字のほとんどは、どんな哺乳類でも同じです。だからそれが同じ遺伝子だとわかります。そこで作業を始める。そして異なった文字の数をきちんと数えるのです。

そのようにしてFOXP2の場合、人間とチンパンジーの間の異なった文字の数を数えてみると、これはたった9つです。人間とマウスの異なる文字数を数えてみると、よく知らないが、30とかそんな数です。実はカエルもこれをもっていて、200ほどの違いが見つかります。

そのように動物のどんなペアでも好きなように作って――カンガルーとライオン、ウマとネコ、人間とネズミ、というように好きなようにペアを作って、ある特定の遺伝子の文字の違いの数を数え、それを図表にとってみると、これが完全な枝分かれするヒエラルキーをなすことがわかります。

これは木です。そしてこの木は系統樹(family tree)以外の何ものでもない。そこでまた同じことを別 の遺伝子についてやってみる。FOXP2遺伝子の系統樹ができたら、また同じことを別 の遺伝子で、また別の遺伝子、また別の遺伝子でやってみる。すると同じ系統樹が得られるのです。

またもし、もはや機能していない遺伝子、痕跡にすぎない、何もしてない遺伝子を取ってやってみても同じ系統樹が得られるのです。それはもはや使われていない、ハードディスクの文書の切れ端のようなもので、ディレクトリーにすでになく、見ることもないものです。ここでもやはり同じ系統樹が形成されます。

これは圧倒的に強力な証拠です。もし進化が真実であることを証明するものだと言うことを避けようとしたら、残された道は、インテリジェント・デザイナー、つまり神がことさら我々にウソをつくことを企んだ、わざわざ我々を騙そうと企んだと言う以外にないでしょう。

なるほど――ではこれがなぜ大ウソなのかを説明しよう。これはドーキンズが一般 大衆に向かって言ってはいけないことである。なぜならそれは単純に真実でないからだ。

まず、ドーキンズが主張していることを図で説明しよう――



今かりに動物種A,B,Cのゲノムをサンプルに選び、それぞれの種が、X,Y,Zという遺伝子のコピーをもっていることを発見したとしよう。ドーキンズが言っているように、これらの遺伝子は相互に非常に高い相似性を示すものなので、これらは機能的に同じ遺伝子の「単語」だと言ってよい。我々が遺伝子配列どうしを並べ、違いを数えてみると、それぞれの場合に、遺伝子は同じ枝分かれのパターンを示す。すなわちCは最も深く(早く)枝分かれしたグループであり、AとBはいずれもCに対してよりも、相互間でより近い関係にある。

もしこれが抽象的でわかりにくければ、(類比として)人間の家族の子供たち、アラン(A)とビル(B)とクレア(C)を説明する枝分かれ順序を考えてみるとよい。


クレアが最初に生まれ、アランとビルは双子として後から生まれた。このパターンを頭に入れておいて、もしこの歴史(すなわち関係パターン)が事実だとすると、それは必然的に、例えばアランとクレアが双子だというような、他の可能な歴史をすべて排除することになる。

ドーキンズは、遺伝子比較を用いれば、生物学者は常に同じ進化の「系統樹」を見出し、決して次のようなパターンを観察することはないと主張する――


ここでは遺伝子Xはある1つの歴史を作り出し、遺伝子YとZはそれに矛盾する歴史を作り出している(アンイコールで示されている)。この枝分かれパターンのうちの、ただ1つだけが真実であることができる。(現実にはすべてが間違いということもあるが、1つが真実であれば、他は間違いでなければならない。)再び、理解のための類比としてアランとビルとクレアを考えてみよう――


もしアランとビルが本当に双子で、クレアより年下ならば、それ以外のパターンは真実ではありえない。自分の家族を考えてみて、誰が一番年長で、誰が一番下で、誰が真ん中か、あるいは誰と誰が双子かについて疑問はないだろう。

ところがドーキンズは、現実の遺伝子データにおいて、このような矛盾を見ることは決してないと主張するのである。我々は常に同じ系統樹を見出すのだ、と。

なんというタワゴトか! これが「大ウソ」なのだ。そしてオックフォード大学「科学の一般 理解」講座前教授ドーキンズは、こんなことを一般の聴衆に向かって話したり、書いたりしてはならないのだ。この主張は虚偽である。もしあなたが今度、ドーキンズが一般 聴衆に向かって話す会場に出席することがあったら――我々は彼がこのサイトを読むだろうと確信している――どうかこの問題を聴衆の面 前で、彼に問いただしてみてほしい。

[ネオダーウィニズムを前提として調べてみると]遺伝子は常に相互に矛盾する。例えば、下に例示した2番目の論文からの図(リンク)をクリックして見られよ。上に説明としてあげたアラン、ビル、クレアの関係の混乱と全く同じ1つの例が示されている。Churakovらは、5つの遺伝子が最初のパターン、人間とアルマジロが最も近い関係であることを支持し、9つの遺伝子がそれと矛盾する歴史、人間とゾウが最も近い関係であることを支持し、8つの遺伝子がもう1つの互いに矛盾する歴史、ゾウとアルマジロが最も近い関係であることを支持していることを発見した。

もしこれについてさらなる探究を望まれるなら、この問題の様々な面 を扱った4つの論文をここに挙げておくが、他に数百の論文を我々は引証することができる――

Gene tree discordance
Mosaic retroposon insertion
Large-scale taxonomic profiling eukaryotes
Conflicting phylogenetic signals (いずれもリンク)

一致しない遺伝子系統発生学の問題は、今では、比較生物学内部の全研究分野を代表するものである。もしドーキンズがこれを知らないとしたら、彼はこの主題について話すべきではない。もし知っているなら、彼は「大ウソ」を堂々と話していることになる。

「誤った見方」についてはどうか? これは先刻ご存知の通 りである。すべての証拠が、ドーキンズや彼の盟友によって解釈されたような、生命の歴史についてのダーウィンの考えを支持している。

ダーウィンが生きていたらどうするだろうか? 

 

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