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新しい福音伝道:マイケル・ダウドの進化論的キリスト教

Gailon Totheroth
April 22, 2011

(編集者注: キリスト教伝道者を自称しながら、最も過激な、いわゆる「新無神論者」を積極的に肯定し、IDだけは認めようとしないMichael Dowdの説教や著書が、かなり広く科学者や一般の支持を集めているという現実がある。この論文はその秘密を分析し解説している。)

経歴
マイケル・ダウドとは何者か? 彼は福音伝道者を自称する。当然ながら彼は教会で説教している。しかしダウドの説く福音は、罪は神への反逆でなく、ダーウィンの拒絶にあるというものだ。

同様に、救いはローマの十字架にかかったイエスからでなく、ただ生まれてくる宇宙を肯定することからくるという。だから2008年の彼の主著のタイトルにあるように『神よ、進化をありがとう』と言わねばならない。副題には「科学と宗教の結婚」とあり、この大人気を博した本は、6人ものノーベル賞受賞者の推薦を受け、標準的なダーウィニズムは科学的に正しく、かつ宗教的に勇気を与えるものだという中心テーマを展開している。

宗教・進化論論争がいっこうに収まるようすもないのだから、あらゆる場合にダーウィンを当てはめるダウドのやり方では、本も売れないだろうと思うかもしれない。ところがダウドのあふれるような友好的態度と見かけの寛大さによって、多くの人々が彼に引き寄せられている。彼の売上の術は、無神論者やキリスト教伝道者をも凌いでいる。

とはいえ、ダウドが人を動かし奮い立たせるといっても、それはあらゆる人を畏怖させるようなものではない。彼を受け入れない人たちには、ネオダーウィニズムを全面 的また部分的に疑問視する人々、宗教に違和感をもつ人々、そして伝統的な宗教に固執する保守的な人々がいる。

2002年以来、この自称「進化論的福音伝道者」は、アメリカ全土を巡回して、主として学校や教会グループで行われる講演予約をこなしている。その上に、ダウドは4つの主たるウエブサイト、3冊の著書があり、国連において「新文化を生み出すための公開フォーラム」を経営するグループValues Caucusのために講演をしている。

しかしダウドの背景には古い文化がある。ローマ・カトリックとして成長した彼は、1979年に兵役についていたとき、クリスチャンとして生まれ変わったと言っている。彼は、進化論をほとんど有害なタワゴトと考えていたのだが、Evangel University(保守のペンテコステ派)の教授たちが、彼に全く違った確信をもたせるようになったと言う。そのあと彼は神学校へ行き、9年間、リベラルなUnited Church of Christ(基督教団)で働いた。

このUCCに在職中の1988年、彼は進化論的神秘主義を完全に受け入れた。「新しいカトリック神秘主義」に関する講義をする1時間前になって、ダウドは泣いていた、そして「宇宙の科学的物語」が「聖なる叙事詩」として見えた、と彼は言っている。「私は人生の残りを、この観点を偉大なニュースとして人々と分かち合うことに捧げようと思いました」と彼は付け加える。実はダウドの世界観は、キリスト教的一神教から宗教的自然主義に移行したのだった。

彼の、キリスト教の言葉を保持しながらの自然主義への宗旨替えは、Skeptic誌に載せた最近の論文の言明に現れている――

「神は人格ではない。神は、現実世界の非常に意味深い1つあるいはそれ以上の次元の人格化である。」
「〈神と和合する〉とは、この惑星や、そのすべての見事に多様な種や文化との正しい関係に入ることを意味する。」
「私は、宗教的指導者たちが、人間共通の創造ストーリー(ダーウィン進化論のこと)から導きとインスピレーションを得て、科学の諸発見を神の言葉として教え説教する日がくることを予見する。その時になれば、我々の信仰の伝統は栄え、多くの人々が過去を振り返り、〈神よ、新無神論者(New Atheists)を送ってくれてありがとう〉と叫ぶだろう。」

神学用語を取り入れているにもかかわらず、ダウドの世界観には、伝統的なキリスト教は言うにおよばず、伝統的な一神教の痕跡もほとんどない。実際、ダウドによれば「超自然的なもの」自体が存在せず、それは単に西洋精神の発明したものにすぎない。「いわゆる超自然的領域が存在した場所は、人間の心と感情(と言葉)だけであることを、証拠が示している。それも最近のことにすぎない。」したがって聖書の神は、ポセイドンやヘリオスといったギリシャの神々と同様、現実のものではない。そして聖書それ自体が、今日我々が直面 する挑戦に対して、何の現実的な指針をも与えない「古い神話物語」のごた混ぜにすぎない――「我々の時代は、宇宙望遠鏡、電子顕微鏡、スーパーコンピューター、ワールドワイドウエブの時代だ。それはまた誘導爆弾、崩壊する経済、爆発する石油プラットフォームの時代でもある。現代は、少数の山羊飼い、テント生活者、らくだ使いたちに与えられた教訓を解析するような時代ではない。」(強調引用者)

福音主義者の後押し
ダウドの宗教的自然主義という特徴を考えると、EvolutionaryChristianity.com「The Advent of Evolutionary Christianity(進化論的キリスト教到来)」というサイトの最近の一連のインタビューに、多くのキリスト教伝道者が出てくるのは驚くべきことに思えるかもしれない。ダウドの計画に対する福音伝道者たちの黙認は、たしかに不思議である。

例えば、40人近いインタビューを受けた人々の中に、Eastern Nazarene Collegeの物理学教授Karl Gibersonがいて、彼は「福音主義神学は進化論と仲直りしたことがない」と嘆いている。つまり、福音主義者のある者たちは、ダーウィンの進化の理解を受け付けず、彼らの神学の中に取り入れたことがない、と言う。

ジバーソンは、ダーウィン支持のBioLogos Forum――彼が、最も有名な福音主義的ダーウィン支持者、フランシス・コリンズと共に創設したグループ――の副会長を勤めている。BioLogosウエブサイトはこう言明している――「我々は、聖書は霊感による神の言葉だと信ずる。我々はまた、進化論は正しく理解すれば、神の創造行為の最上の説明だと信ずる。」しかしダウドは、神は宇宙の比喩にすぎず、聖書は善悪を決定するのに使えないと考えている。科学が新しい聖書なのだ。これではBioLogosとダウドは相容れないように見える。

実際ジバーソンは、ダウドの言うことの60%は受け入れられないと言っている。にもかかわらずジバーソンは、「到来」シリーズの1時間にわたるインタビューで、ダウドの主張することに全く反対していない。なぜだろう? ジバーソンは言う、「互いの違いを気持ちよく脇にのけて、キリスト教信仰と進化論の調和を促進するために、マイケル・ダウドと腕を組んで協働するのはすばらしいことだ。」

またジバーソンは、新無神論者についてもダウドと意見が合わず、彼の著書Saving Darwinの中で彼らを責めている。どうなっているのだろう? ドーキンズやハリスの[新無神論者]仲間は、まさにダウドが神の予言者として称える人たちではないのか? しかしジバーソンは、ダーウィン進化論を推進するために協力関係を結ぶことの方が、彼らの宗教的信念の間にある溝よりも大切なことだと言うのである。

無関心層の取り込み
ダウドが「新無神論者」を予言者として称えるのは別にしても、彼は世俗主義者を説得するすぐれた才能をもっている。無神論者のブロッガー Phil Fergusonは初め、ダウドの「到来」シリーズについて曖昧な言い方をしていた。ファーガソンにとって、ダウドと彼の軍団の、作り上げたまがいもの宗教は、「既知の科学を敵に回さない」かぎりOKであった。同時に「たぶん、彼らは宗教を広めるために科学を悪用しているようだ」と言っていた。

ダウドがネット上で、自分は「宗教的自然主義者」だが、そこでは神は旧来の意味ではないと返答すると、ファーガソンは乗ってきた。彼はダウドの「意図と努力」、それに「このブログから悲鳴をあげて逃げようとする人々を取り込もうとする実践精神は立派なもので、この仕事を続けられることを希望する」と書いた。

福音主義者の反対
誰もかれも、ダウドのバンドワゴンに引き寄せられるというわけではない。新約聖書学者Peter Jonesはダウドの世界観を、著書One or Two: Seeing a World of Difference (2010)で「ワン・イズム」と評した。ジョーンズは、ダウドの用いるキリスト教や聖書の用語を欺瞞的だと評する。彼は「被造世界崇拝」を誓う者とは同調することができないと言う。

スタンフォードの科学者Richard Bubeは、ダウドもジバーソンも尊敬している学者だが、彼は1900年のダウドの最初の本The Meaning of Life in the 1990sに対して、非常に批判的だった。ブービーは、科学における敬虔なクリスチャンの組織であるASA(American Scientific Affiliation, 米国科学協会)の元会長であり、科学と信仰を調和させようとする努力のパイオニアだ。

ダウドは、ブービーの書く物は彼の学生時代の「ライフライン」だったと言っている。しかしブービーは、ダウドの、「宇宙の原始の一つ一つが、非物質的なそして究極的に不可知の内なる知性をもっている」、そして「地球は生きていて、我々は地球の反射的意識だ」という主張は虚偽だと言っている。ブービーはまた、ダウドが聖書とキリスト教神学を勝手に解釈することを批判し、「こうしたキリスト教の逸脱が将来の定まった方向であるかのように言う思想が、キリスト教社会に根付かないように注意しなければならない」と結論している。

多様性という立場表明?
ダウドは自分の行為のすべてを、寛大さと多様性の枠に収める。結局のところ、と彼は言う、「森林や池のエコシステムのように、変化と種の異なった多様性は、エコシステムの健康に寄与している。それは意識や文化においても真理だと私は思う。」

しかし、彼が進んで取り入れようとするその多様性の範囲には、厳しい制限があるようだ。一つには、新無神論者と「迷信的・あの世的宗教性」への彼らのバッシングを、鼻につくほど賞賛し支持することによって、ダウドは間違いなく、ダーウィン進化論についての議論に伝統的な一神教論者を参加させることを拒否するよう奨めているようだ。結局のところ、新無神論者たちの目標の一つは、伝統的宗教の正体を暴いて、その信奉者たちが公的な場から完全に追い出されるようにすることである。

ところで一方、彼自身のEvolutionaryChristianity.com の対談シリーズに、対話の一部として、生物学におけるインテリジェント・デザイン支持者が、誰か入っているだろうと期待してはいけない。

なぜID運動の誰かを、40人もの「進化論的キリスト教到来」シリーズのインタビューに加えないのかを問われ、彼は答えて「もしそれを再び行うとすれば、私はその見方をする人たちから、おそらく1人か2人か3人を含めることになるでしょう。・・・確かに私はよりID的な観点の仕事のあるものについて、インタビューし、時には特集することも考えています」と言った。

しかし彼は、ID唱道者をインタビューするには前提条件があると言った。候補者は、「到来」のインタビューを受ける人たちが了解しているとダウドが言う、4つの概念に賛成していなければならない――「我々はすべてキリスト教徒を誓った者である。我々はすべて、証拠を神の伝達、神の導きとして尊重する。我々はすべて深い時間の目(deep-time eyes)を持っている。そして我々はすべてグローバルなハートを持っている。」

しかし、インタビューされるこの人たちは、明らかに、キリスト教徒であるとはどういうことかについて合意していないのに、いったいどうして、共通 の立場のこれら4つのポイントに本当に合格していると言えるのか? あるいは、「神の伝達」とは何を意味するのか? 何が証拠として認められるのか?「深い時間の目」とは古い地球の年代のことをいうのか、それともダウドのウエブサイトに言うように、「人の地球の力との霊的交感(communion)」のことを指しているのか? 「グローバルなハート」とは、人間は「生命のより大きな塊」の一部にすぎないのだから、どんな動物でも人間と変わらない、ということを意味するのか?

多くの声を尊重するというダウドの方針はたしかに、彼の声は多くの声の一つだという主張を裏切っていないが、「到来」シリーズを支配しているのは彼の声である。インタビュー中に話やコメントを遮ることによって、ダウドは他の誰よりもはるかに大きな影響を及ぼしている。

ダウドの世界観とその影響
ダウドについて確かなことは、彼が20年以上にわたって宗教的無神論という世界観を保持してきたことである。昔との違いは、今日、何百万という人々がダウドの宇宙信仰へと切り替えたことだ。実際、アナリストの推測では、5千万のアメリカ人と1億のヨーロッパ人が、かつて「ニュー・エイジャー」と呼ばれた人々に当てはまるが、ただ、今では彼らは、Cultural Creatives(文化的創造家?)、Progressives(進歩主義者)、Brights(平等思想や自然主義的世界観をもつ社会改良家?)、Integral Spiritualists(統合的霊性主義者?)などと呼ばれたがっている。

それで結局、キリスト教と進化論の融合論者であるダウドにとって、何がうまくいっているのか? 党の路線としての――神秘主義を伴った――進化論か、それともその逆か?

そして頑固な進化論者でダウドを歓迎しない者があるだろうか? ダウド自身、あの無神論的進化生物学者PZ Myersを自分に近い者だと言っている――「PZと私の意見の食い違うところはわずかしかない。ただおそらく、私は宗教を進化させようと努めているが、彼は社会を宗教から解放しようとしているだけだ。」

この過程で、筋道を立てた大進化への科学的反論や、インテリジェント・デザインのようなネオダーウィニズムの代替論は打ち捨てられる。もう一方の被害者は、十分に考えられた伝統的宗教であり、こちらはリサイクルされた異教以外の何物でもない最新の神秘的流行思想のために、不当にも犠牲に供せられている。

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