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オオカバマダラのゲノムはブラック・ボックスを開けられるか?
ENV
December 5, 2011
「さなぎを入力――ブラック・ボックス――出力は蝶、何が起こったのでしょう?」と、イラストラ・メディア社製作のドキュメンタリーDVD、Metamorphosisの中で生物学者Ann
Gauger(ゲイジャー)は言っている。秘密は遺伝子にあるのだろうか?
この映画を見た人々は、オオカバマダラ(Monarch
butterfly)の移動(渡り)の物語を忘れることはできないだろう。どうしてこの7グラムにも満たない繊細な飛行機械が、メキシコへの2000マイルの道のりを、そこへ行った経験もなしに間違いなく移動し、前年に彼らの曾祖父母が止まった同じ木にとまることができるかは、生物学の深い謎であり、自然界の最も驚くべき光景の1つである。今、彼らの遺伝子図書館がそのブラック・ボックスを初めて見せ始めた。
オオカバマダラのゲノムの大略が今年発表された。マサチューセッツ大学医学部の科学者グループが、手掛かりを求めてゲノムを解析した。先週、彼らは学術誌Cell(リンク)にその結果
を発表し、ウエブサイトUMMSにプレス・レリースを載せている(リンク)。
興味あることがらが明るみに出た――「おそらくオオカバマダラの移動の主要な相に関わりそうな、いくつかの遺伝子族を含む」16,866個のタンパク質コード遺伝子を、彼らは発見した。驚いたことに、DNAの塩基ペアの総数は、これまでゲノム配列の調べられた唯一の鱗翅類である蚕(かいこ)のそれより、40%も少なかった。にもかかわらずオオカバマダラのゲノムは、「オーソロジーの内容、マイクロシンテニー、タンパク質族の大きさにおいて、顕著な相似性を示している。」研究チームは、オオカバマダラの遺伝子の、太陽羅針盤、24時間周期時計、定位
力、化学防衛力、嗅覚による牽引、ホルモン制御などとの関係について、いくつかの目新しい洞察を列挙している。ネイチャー誌のNewsBlog(リンク)はこの発見を次のように要約している――
新しいゲノムの内部で、研究チームは、この昆虫がどうして行く先を知るのかを説明する一助となる、いくつかの遺伝子グルーピングを発見した。他の配列決定された昆虫と比べて、この蝶は視覚の領域に異なった遺伝子パターンをもつが、これは行程のガイドとして太陽からの手掛かりを得るのを助けるかもしれない。この研究はまた、この蝶の24時間周期時計が他の動物のそれといかに違うかに関する、遺伝子的手掛かりを見つけたが、これはこの長距離飛行昆虫が旅行中に、光に異なった反応をするのを助けるかもしれない。
「助ける…かも…かも」。明らかなのは、この発見が今のところせいぜい予備的で仮定的で、答えを得るよりかえって疑問が大きくなったことだ。科学メディア・サイトの書き方は、おおむね未来形である。Science
Newsline Biologyはこのチームの言葉を引用している――
全体から言って、オオカバマダラのゲノムとそのプロテオーム(遺伝子により発現されたタンパク質の全体)は、この蝶の移動についての理解を助ける宝庫となっている。それは、渡りをする群としない群との間の、群遺伝子解析の確実な背景となり、渡り鳥のような脊椎動物を含む、他の長距離渡り種においてまだ発見されていない、ナビゲーションに関わる遺伝子の、今後の遺伝子比較のための基礎となるものである。
しかしDNAのひもから物語全体が繰り出されるものだろうか? この研究のシニアであるStephen
M. Reppert医博は、プレス・レリースでこうコメントしている−―「この蝶の渡り行動の根底に遺伝的プログラムがなければならない。我々はそのプログラムがどういうものか、それがどう働くのかを知りたいのである。」レッパートのこの言葉には、後成的要因の役割があるかもしれぬ
という考えが抜け落ちていることに注意せよ。オオカバマダラの不気味なナビゲーション能力の根底に遺伝子プログラムがあるかもしれないが、それで説明は十分だろうか?
ある手掛かりがこの分析に現れている。概要を読むと、このチームは「この蝶の夏種と渡り種の間で異なって発現されるマイクロRNAを発見した。」後者はいわゆる「メトセラ世代」で、その親や祖父母より10倍も長く生きて、メキシコへの旅とテキサスへの戻りを果
たす世代だ。マイクロRNAは遺伝子からくるのでなく、遺伝子発現を制御するDNAからの短い転写
である。これは非常に面白いことだが、この現象を支配するものは何かという問題が新たに生ずる。制御遺伝子を制御するのは何か? 誰が、あるいは何が、遺伝プログラムを書き運用するのか?
この科学者たちは「進化」がプログラマーだと言う。概要にはこうある、「オーソロジーの諸特性は、鱗翅目がこれまで調べられた最も早く進化する昆虫であることを示している。」これはカイコの蛾とオオカバマダラの塩基対総数の違いや、共通
祖先からどれくらいの時間が経過していると研究者が仮定するか、から推測されたものだ。このチームが正統的な信念に逆らわないかぎり、「進化」と彼らが言うのは、盲目的でガイドがなく目的もないプロセスが、共通
祖先の子孫を異なった創造的道へと導くことを意味する。カイコは絹を紡ぐ専門性を発達させ、オオカバマダラは絶妙なナビゲーション機械を発達させた。そのすべてにおいて、そうした目的を全くもたない一連の偶然的な変異によってである。
彼らの説明は筋が通らない。一方では彼らは遺伝的プログラムが存在すると仮定する。他方では、導きをもたないプロセスがオオカバマダラの渡りの驚異を生み出しただけでなく、もともとのプログラムを書き、これをグレード・アップさせたと考える。我々の一貫した経験からどんなに考えても、そんな空想は成り立たない。プログラムを書くのはプログラマーであることはみんな知っている。我々は、蝶のように環境の手掛かりを利用して行路を定める航空機や宇宙船を作る。しかし我々は、ハードウエアもソフトウエアも知性からくるのであって、導きをもたない諸力からくるのでないことを知っている。これが、オオカバマダラの渡りの最上の説明として推論できるのは、インテリジェント・デザインだとする一つの理由である。
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