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生命起源の自然主義的説明に難関――最古のジルコンが示す酸素の存在

ENV
December 7, 2011

最近のネイチャー誌が(リンク)、44億年ほど前の地球の大気の酸素レベルを測定する新技術を報告している。報告者たちは、火山マグマから形成される化合物であるジルコン内部のセリウム酸化状態を調べることによって、初期の地球の酸化レベルを突き止めることができることを発見した。この発見は、初期の地球の酸素レベルが現在のレベルに非常に近かったことを示唆している。

有機反応は炭素を含む化合物にかかわる反応である。生命起源研究という目的のために、我々は、ヌクレオチド、DNAとRNAを構成する有機化合物、タンパク質の組み立てブロックである有機化合物=アミノ酸などに興味をもっている。生命起源科学者の間では、RNAファースト・ワールド仮説がかなり根付いている。(この領域の最近の研究に関する論文を参照(リンク))しかしRNAは他のRNA分子から、タンパク質は他のタンパク質からくる。したがって最初の生命分子は、今日の作られ方とは違った別 の過程によって生じたに違いない。ミラーとユーリは、ある大気の状態のもとで正しい放電を行えば、メタン、アンモニア、水のような無機化合物から、いくつかのアミノ酸が形成されることを示す実験を行った。いくつかの実験が、いろんな最初の無機物質を用いて行われ、すべて僅かのアミノ酸を生じた。しかしこれらすべての実験の1つの鍵となる特徴は、酸素がないことであった。

もし大気に酸素(や他のオキシダント)が含まれていれば、これは酸化性大気である。もし大気に酸素がなければ、これは不活性または還元性大気である。戸外にほっておかれた金属、たとえば鉄を考えてみよう。この金属は必ず錆びる。錆びるのはこの金属が酸化した結果 である。アミノ酸を生ずるような有機反応においては、酸素が存在していないことが最も重要だ。そうでないと反応は潰れてしまう。したがって科学者たちは、初期の地球は、最初の生命(あるいは最初の生命の構成部品)が形成されたときには、還元的大気をもっていただろうと結論した。なぜならそれがアミノ酸を生ずるための最上の環境だから。大気は、結局は酸素を蓄積するようになったが、生命は酸化的大気の中では生じなかったはずだ。

この仮説の問題は、有機的生命が無機物質から形成されたに違いないという仮定に基づいていることである。だからこそ初期の地球は還元的大気だったに違いないことになる。しかしながらこの研究は30年以上も続いてきたが、初期の地球には酸素が確かにあったという結論が優勢となっている。不幸なことに、無機化合物が集まって生命の組み立てブロックを形成することができるという考えが、あまりに便利なストーリーであったために、ミラー=ユーリの実験や初期の大気が還元的であったという想定が、科学的証拠によって覆された後も長い間、教室の授業では生き残ったのである。

このネイチャー誌の発表に戻るが、これは初期の地球の還元的環境を疑うべきもう一つの理由を提供するものである。著者たちはジルコン内部のセリウムの酸化レベルを調べた。ジルコンはマグマの個体化によって形成される固い石である。ジルコンについてはその年齢と耐久性のゆえに、いくつかの研究がなされている。(例えば、ジルコンを用いて地上にいつ頃海洋と陸地があったかを決定する研究報告(リンク)を見よ。)セリウム(Ce)は初期の地球のジルコンに見つけることのできる元素である。セリウムの+3と+4酸化状態の率は、このセリウムがジルコンに閉じ込められた時期の環境の状態の指標になる。特定的に、セリウムの酸化率は大気中の酸素の量 に関係している。著者たちは、さまざまな酸化率におけるセリウムのしみ込んだジルコンを実験室で作り出し、目盛カーブを作って、初期の地球のサンプルをこれと比較できるようにした。

彼らの調査結果は、酸素が初期の地球の大気に存在したということだけでない(これは他の研究でも示されていることだ)。酸素は44億年も前に存在していたことを示したのである。これは、RNAファースト・ワールドのような生命起源シナリオが、生命が始まるために利用できる時間を大幅に縮小するもので、信じられないほどの短い時間にしてしまう。ヌクレオチドやアミノ酸が純粋に自然主義的な環境(偶然と化学)から生ずるためには、いくつかの要因が非常にうまく一致しなければならない。要求されている特定の条件は、すでに純粋に自然主義的な生命起源シナリオを、きわめてあり得ないものにしている。利用できる時間を劇的に短縮し、満たされなければならない他の条件にこれを加えるならば、RNAワールド仮説とかミラー=ユーリ式のアミノ酸合成は、完全に不可能となる。

この研究は、ジルコンの時代決めにある程度の自信をもっていることを前提としている。しかしその点での我々の自信は論点となりうる。確かにジルコンは堅牢さと耐久性を示しているように見える。しかしある科学者は、ジルコンの時代決定を、それがジルコン内部のウラニウムや鉛のレベルに基づいているという理由で疑問視する。また別 の科学者は、ジルコンの時代決定技術は信頼性があり、これらのジルコンのサンプルはこれまでに見つかった最古のものだと主張する。ジルコンの時代決定の方法についての論争や特殊性は、この記事の範囲を越える問題だが、これはこの研究の成果 の持つ意味に関係してくるから、注意しておく必要がある。

それは生命起源研究にとって現実にどんな意味があるだろうか? インタビューの中で(リンク)、この論文の著者の一人Bruce Watsonは、「ある程度の確実性をもって今いえることは、地球上の生命の起源を研究する多くの科学者が、全く間違った大気を想定しているということだ」と言っている。彼は彼らの研究の成果 が、「おそらく、そうした生命の組み立てブロックは地球上で作られたものではなく、銀河系の別 の場所から運ばれてきたという説を再活性化するかもしれない」と考えている。そうかもしれない。しかし、生命が地上で純粋に自然主義的原因から生じたと証明することが困難だからといって、その解決は別 の場所に見つけなければならない、ということには必ずしもならないだろう。

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