Evolution News & Views

遺伝子に求めることはできない胚の電気場

Jonathan Wells
December 11, 2011

多くの生物学者が、胚の発生はDNAにコードされた遺伝プログラムによってコントロールされていると考えている――発生は遺伝プログラムに還元することはできない、と主張する生物学者も中にはいるのだが。DNAはタンパク質のアミノ酸配列を特定するのに関わっているが、胚の3次元構造を特定するには、別 の情報源が必要になる。そのような情報源の1つは、一要因として、内生的な電気場、すなわち胚自身の作り出す電気場によって伝達される空間的座標(複数)のシステムである。

1950年代に、デンマークの化学者Jens Skouは、生きた細胞の膜には複雑な通路があって、それらが吸い込む2個のカリウム・イオンに対して、3個のナトリウム・イオンを押し出していることを発見した。ナトリウムとカリウムはそれぞれ+1の電荷をもっているから、細胞の内部はその外側に対して電気的にマイナスとなり、これが内生的電気場を作り出す。

1970年代、アメリカの生物理学者Lionel JaffeとRichard Nuccitelliは、内生的電気場を測定できる探り針を発明した。この2人の率いる研究チームはさらに進んで、内生的電気場は(他にもあるが)カエルやニワトリの胚でつくられ、そのような場が発生途上の細胞の振舞をコントロールできることを示し

1995年、パーデュー大学の生医学技師Richard BorgensとRiyi Shiは、内生的電気場が、胚のパターンを決定するための空間的座標を作り出しているという説を唱えた。

最近では、Tufts大学の生物学者Dany S. Adamsとその仲間は、カエルの胚の中に顔の発生に一役を買う、今までに見られたことのない生電気信号を発見した。タフツ大学の生物学者Michael Levinらがこれらの信号を人工的に操作すると、影響された胚は頭の領域の外側に眼を形成した。

遺伝子プログラム唱道者は、このような内生的電気場は完全にDNA情報によって特定されていると主張するかもしれないが、私はそうでないと主張する。単細胞生物の実験によって、膜のパターンはすでに存在する膜によって決定されるのであって、DNAによるのではないことが判明している。したがって、個々のナトリウム-カリウム通 路の分子構成部品はDNA配列にコードされているかもしれないが、これらの通 路の3次元的並び――これが内生的電気場の形を決定する――が胚発生における独立した情報源となっているのである。

最新情報INDEX