ジョナサン・ウェルズ論文についてのコメント
(Jonathan Wells;“Using Intelligent Design Theory to Guide Scientific Research” PCID 3.1.2, November 2004)

by H.I.(内科医)

・ウェルズはID理論を適応させて生物医学的な問題解決を試みるにあたってガンをその対象に選び、特に近年の研究の成果からガンがDNAの病気というよりも中心体(Centrosome)の病気である、という考え方に目を付けている。そして中心体を形成する中心子(Centriole)が微小なタービンのように見えることからそれが実際タービンの働きをしているものと仮定して研究を進め、減数分裂後期における染色体を移動させる細胞内の流れを作り出す働きしているモデルを物理学的検討を加えながら作り上げている。

・このような発想は無目的で盲目的なダーウィン進化論の発想から遠くかけ離れたものであるが故に、そのような観点に囚われている科学者からはとうてい出てこないものである。しかしID理論の観点からは自然な発想である。

・もしウェルズの仮説によりこれまで理解できなかった現象が説明され、ガンの治療においてもこれまでにない貢献がなされた場合にダーウィニストはどのように反論するのだろうか?

・ウェルズはID理論を実際の生物学的問題に適応させて問題解決を図る方法をTOPS(Theory of Organismal Problem-Solving)と名付けているが、これを当てはめることによってこれまで謎とされてきた種々の問題が解決されるような事例が他にも多数あるのではないだろうか?

・例えばダーウィン進化論の観点から説明が困難な現象として、生物の構造の中には無駄なものはひとつもないという事実が挙げられる。ダーウィンの観点からすればすべての生物体は我々人間も含めて進化途上にある。そうだとすれば生物の身体には無駄な器官が多数存在するはずであるが、そのような器官はほとんどない。昔、私が医学部の学生だったときに発生学の教師が次のようなことを言っていたのを今でもはっきりと覚えている。「生物の構造や機能を考える場合にそれらを目的論的に考えるのは間違っているが、目的論的に考えた方が分かりやすいことが多い。」彼は明らかに唯物的なダーウィニストであったが、この発言は明らかな矛盾である。矛盾を感じつつもダーウィン進化論の代案を見出せずにいるのが多くの生物学者の現状であろう。宇宙の知性を認めるよりはその方が科学的だ、ということなのだと思う。

・いずれにせよウェルズの仮説が真実であるとすれば驚くべき内容である。しかしよくよく考えてみればこの地球上にこれだけ多様で精巧な機能をもった生命が満ち溢れ、お互いが調和しつつ生存していること自体が大いなる奇跡である。そのような前提に立てばウェルズの仮説を受け入れるのに違和感を感じることもなくなるのではなかろうか?

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